事業等のリスク

JSPグループは毎年リスクアセスメントを実施し、リスクの特定、分析、評価を行い、リスク顕在化の未然防止及び低減に努めております。

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性がある主要な事業等のリスクは以下のとおりであります。これらの事業等のリスクは、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において判断したものであり、全てのリスクを網羅したものではなく、リスクアセスメントの結果を加味して投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。




(1)事業(外部)環境に関するリスク




① 主要市場環境の変化

JSPグループは、2021年度から2023年度の3カ年を実行期間とする新中期経営計画「Change for Growth」を2021年度よりスタートし、当事業年度は最終年度にあたります。本計画の対象期間は、10年スパンのありたい姿を定めた長期ビジョン『VISION2027』達成に向けた第二ステップと位置付けております。

本計画は、前中期経営計画に引き続き、持続的成長の原動力として「自動車関連部品」「建築住宅断熱材」「フラットパネルディスプレイ表面保護材」の3つの事業領域の拡大を目指します。前中期経営計画期間において、これらの事業領域の能力増強投資を実施しており、本中期経営計画では、投資を回収するための施策を講じてまいりますが、需要や経済情勢、技術動向、法規制の改定等さまざまな要因による市場環境の変化によっては計画どおりに回収が進まない可能性があります。

当社グループは、市場環境の変化に対応するため、上記既存事業に加え新しい事業領域への展開を進めてまいります。また、環境問題への意識の高まりに対し、サステナビリティ経営に軸足を置いた変革戦略を進め、循環型経済に対応した製品とサービスの提供に努めてまいります。

② 海外事業展開に関するリスク

JSPグループは、北米、南米、欧州、アジアの各地域で広く事業を展開しておりますが、各地域の政治的または経済的要因、環境規制等による投資許可、移転価格税制上の問題、社会情勢の変化や各種規制の動向、労働争議、人材確保の困難さ、為替レートの変動等が各地域の事業活動に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、本社機能として当社グローバル事業本部が各拠点のPDCAサイクルを管理することでリスク低減に努めております。また、グループガバナンス強化として内部統制機能の更なる充実化を図ってまいります。

③ 価格競争の激化

JSPグループの製品群はライフサイクルの長いものもあり、多くの製品は厳しい価格競争に晒されています。特にアジア地域では、現地企業の参入や台頭など様々な要因により今後も厳しい価格競争が予想されます。

当社グループは、コスト低減に注力するとともに、高付加価値製品シフトによる競合優位性を維持拡大することで適正な利益率の確保に努めてまいります。

④ 原燃料価格の変動

JSPグループの使用する原料や燃料は、原油及びナフサ価格の変動に大きく影響されるため、価格が大きく変動することがあります。近時の地政学的リスクの高まりを背景とした原油相場の高騰により、原燃料価格が近年になく高止まりしています。当社グループの場合、原燃料価格が上昇する局面において、製品価格への転嫁の遅れなどにより業績の悪化を招き易い傾向にあります。

2024年3月期の連結業績予想(2023年4月28日公表)は、原燃料価格高騰に対する価格改定が概ね終了したことにより、増収増益を見込んでおります。一方、ユーティリティコストや物流コスト上昇に伴う取引先との交渉を引き続き進めており、製品価格への全面的な反映が想定よりも遅れる可能性があります。

当社グループは、原燃料価格変動に影響を受けない経営基盤構築として、適時に製品価格に転嫁するため取引先との価格のフォーミュラ化を検討するとともに、コスト低減に努めてまいります。





(2)事業運営に関するリスク

① 人材の確保について

少子高齢化に伴う労働人口の不足、デジタル革命が進む中で専門性の高い特定分野の人材不足など、適時に人材を確保することが年々厳しくなっております。また、人手不足は生産・物流面でコストアップの大きな要因になりつつあり、JSPグループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、長期ビジョン『VISION2027』の基本方針「経営基盤の強化」の中で、人材育成を経営の重要課題のひとつとして捉え、人材育成システムの充実化を図り、グローバル企業として更なる組織強化に努めてまいります。また、生産工程の短縮、製造ラインの自動化などの対策を実施することで、人手不足解消に努めてまいります。

② 感染症拡大(パンデミック)に関するリスク

感染症や伝染病などの拡大に伴い、JSPグループの従業員が感染し従業員同士の接触等により社内での感染が拡大した場合には、工場における生産及び出荷に支障をきたし、ある一定期間操業を停止する可能性があります。また、当社グループの工場が稼働可能であっても、原料の供給が停止する場合など、サプライチェーンに問題が生じると操業停止にせざるを得ない状況となるリスクがあります。

2024年3月期の連結業績予想(2023年4月28日公表)は、新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着きを見せる状況の下、行動制限の緩和などを背景に景気は回復基調で推移する前提で試算しております。

当社グループは、従業員の健康と安全を確保するため、引き続き新型コロナウイルス感染予防措置を継続するとともに、一層の経営基盤の整備改善を進めてまいります。

③ 知的財産権について

JSPグループは、国際的な特許権をはじめとして知的財産を多く保有しておりますが、これらを保護することは将来の利益確保の面でも重要です。他社から侵害を受けたり他社との間で紛争が生じたりする場合には、事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、このリスクを回避すべく知的財産管理の統括部署である当社知的財産室を中心として国内外で体制強化に努めております。

④ 品質保証について

JSPグループはメーカーとして、予期せぬ品質欠陥の発生や製造物責任訴訟のリスクが想定されます。当社グループの製品は、食品容器、自動車部品、建築住宅断熱材など最終製品の部材として使用されるものが多く、品質欠陥により顧客において甚大な損害につながる可能性があります。

当社グループは、各工場で品質マネジメントシステムの認証取得を積極的に進めるなど、品質保証体制強化に努めております。

⑤ 固定資産の減損について

JSPグループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2023年3月期において、ビーズ事業に属する当社EPS事業の資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっていることから、減損の兆候を識別しました。当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額を帳簿価額と比較した結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を上回ったため、減損損失の認識は不要と判断いたしました。その詳細については、有価証券報告書(事業年度第65期)※の「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注意事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
https://www.co-jsp.co.jp/ir/upload_file/tdnrelease/7942_2023062913140114_P01_.pdf

今後、市場環境等の変化により、実際の結果が異なった場合又は、前提条件に変化が生じた場合には、翌連結会計年度において、さらなる減損損失を認識する可能性があります。

当社グループは、重要な投資に関して、当初計画から大きく乖離していないかを確認するため経営幹部の出席する主要会議で報告を求めるなど、定期的なモニタリングを実施しております。

⑥ 情報セキュリティ・情報管理について

IT技術が高度に進化する中で、予期できない水準の情報システム基盤や通信回線の重大な障害、あるいは経営に関わる機密情報の破壊・窃取が発生する可能性は完全に排除することはできません。

JSPグループは、情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性の確保に努めるとともに、リスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏えい等のリスクを管理しております。また、外部からの当社グループの情報システムに対する攻撃への対応や非常時を想定した定期的な訓練を実施しております。

⑦ コンプライアンス・内部統制について

JSPグループはグローバルに事業を展開する中で、世界各地域の法規制が変更されることによりその遵守が困難となり、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、その遵守のための新たな費用発生や事業活動が制限される可能性があります。

当社グループは、コンプライアンスをはじめとする適切な内部統制の重要性を認識し、そのシステムを構築し運用しております。具体的には、国内外共通の企業行動準則を定めその周知徹底を図る他、グループ社員全員が利用できる内部通報制度を整備するなど、コンプライアンス体制強化に努めております。





(3)環境・安全等に関するリスク

① 自然災害・事故災害について

JSPグループは、国内外に多数の製造工場を有しており、工場における事故・労働災害、外部倉庫・製品輸送における事故、自然災害による生産設備への被害などが発生する可能性があります。

自然災害の中で最も影響が大きいと予想される地震災害について、発生確率が高いとされる南海トラフの巨大地震が発生した場合、当社四日市地区の工場などがその影響を受け、多大な損害を被る可能性があります。当社グループは、地震保険に加入しリスクの顕在化に備えております。

当社グループは、無事故無災害、安定供給を目標として安全確保に努めております。また地震、大雨、洪水等の自然災害に対しては、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの運用、防災訓練などの対策を実施しております。

② プラスチックの環境問題について

JSPグループは、省資源・省エネルギーなど地球エネルギー資源の保護及び地球環境への配慮を基本としており、主に発泡プラスチックの機能性・利便性を通じて、社会や市場からの要求に応えております。一方で、プラスチックは不適切な処理により海洋ゴミになり、グローバルな社会問題となっています。また、パリ協定、SDGs、ESG課題への注目を背景として、プラスチックリサイクル、他素材への転換、脱プラスチックなどの動きが活発化しています。特に、欧州においてサーキュラー・エコノミーの動きが進展しており、今後さらに資源循環を追求する動きが加速すると想定しております。これらの動きに対し、対応が不十分あるいは遅れた場合には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

プラスチックの環境問題は、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)のひとつであると認識しており、環境対応型製品による社会への貢献、また廃プラスチックのマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、再生原料の使用などの取組みを積極的に進めております。

なお、当社グループは、2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)に賛同し、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会やシナリオ分析、戦略、指標、目標について、当社のサステナビリティ推進体制において審議し、これを取締役会において承認しています。シナリオ分析を通じて、気候変動によるリスクを低減するとともに、リスクを事業上の機会とできるよう当社グループの事業に則した戦略を推進してまいります。気候変動に関する具体的な取り組みについては、こちらに記載しております。

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